地熱住宅って何やねん?

なぜあなたは家を建てるんですか? 

さて、あなたはなぜ家を建てるのでしょう?少し時間を取って考えてみましょう。
そのためにまず、今の家の不満な所を紙に書いてみて下さい。

『家が古い、夏暑く冬寒い、狭い、間取りが不便、防犯面が不安、虫が多い、花粉が・・・』

色々出てきましたね?

では、今挙げた項目に共通することは何でしょうか?それをクリアすることが家を建てる大きな目的のはずですね。

夏暑くて、冬寒くて、狭くて、不便な家に住んでいれば、体の不調やストレスが発生します。
強盗が入れば命の危険もあります。

そう、家を建てる目的とは『家族の命(健康)を守る』ということなのだと思います。
それを考えずに家づくりをして、後で後悔するのは誰だってイヤですね。

私たちの活動目的は家で後悔する方を一人でも減らすことだと思っています。

忍び寄るヒートショックの猛威 

家庭内事故ってご存知ですか?家の中で起こる不慮の事故のことですが、この家庭内事故で亡くなる方は年間12,781人に上ります(平成17年厚生労働省調べ)ちなみに最近飲酒運転やひき逃げで騒がれている交通事故はどうか?と言うと、年間10,028人

実は交通事故で亡くなる方よりも家庭内事故で亡くなる人の方が多いのです。

家庭内事故で最も多いのが溺死。お風呂で溺れて亡くなる方です。『赤ちゃんや子供が溺れているんじゃないの?』と思うなかれ、死者の8割近くが65歳以上の方です。その原因は温度差です。暖かいリビングから寒い洗面、お風呂、そしてお湯につかる、という急激な温度差で血圧が上がり意識を失ってしまうのです。これをヒートショックと呼びます。
30代、40代のときは問題のなかった家が、65歳を過ぎると家族に牙を剥く可能性がある。つまり、ヒートショックのない家が求められているということではないでしょうか。

温度差のない家を造るには? 

家庭内事故で交通事故よりも多くの方が亡くなっている、その原因が急激な温度差によるものだと言うことをお伝えしました。この温度差(ヒートショック)を無くすために、浴室に暖房機を付けたり、廊下を暖房したりという対策があります。ただ、家全体を暖めるにはたくさんの暖房機と燃料費が掛かります。ほとんどの家が、断熱が不十分でスキマだらけ。

暖めた熱が外に逃げてしまう住宅だからです。

少ない光熱費で温度差を無くすには、熱を逃がさない断熱性、スキマの少ない気密性を持つ家が必要になります。これが高気密・高断熱住宅です。
日本の夏は高温多湿。昔から日本人は夏を快適に過ごすための開放的な家を造ってきました。その分、冬の寒さは厳しい。反対に、寒い北欧では石造りで気密性を高め、窓の少ない閉鎖型の家づくりをしていました。高気密・高断熱住宅はこの北欧型の住まいに近いものです。ですが、木造建築が主流になるもっと前、竪穴式住居の時代には、日本人も閉鎖型の住まいをしていたことが分かってきたのです。

アイヌ民族のチセと外断熱工法 

日本においては引き戸主体の開放型住居に移り変わる前、竪穴式住居のような閉鎖型住宅、北欧の石積み住宅に近いものに住んでいました。日本の現住民族といわれるアイヌの人たちも、昭和に入るまで地面に柱を建て、笹の葉や茅、芦でできた住宅【チセ】に住んでいました。
北海道の冬は厳寒です。特に旭川はマイナス15度なんていう気温はざらなのですが、その環境で何百年も生活し、子供を育てていたのです。

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この笹葺きの家ですが、冬になると1mという雪に完全に埋もれてしまい、その雪が天然の断熱材になっていることが分かりました。
この雪によって、チセ住宅は外断熱工法の仕組みを取り入れた閉鎖型住宅となっていたのです。

チセが暖かかった本当の理由 

アイヌ民族のチセ住宅が冬暖かい理由は理論的には解明されていませんでしたが、数多くの証言や文献から明らかになっていました。1981 年、旭川郷土博物館と共同でチセ住宅の研究を行ったのが当会顧問の宇佐美智和子氏でした。

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宇佐美氏は復元標本のチセを使い、アイヌの長老から聞き出した防寒対策をして宿泊体験や実験測定を繰り返す、という研究をおよそ10年に渡って行いました。
当初は、中で火を燃やせば暖かくなるだろう、くらいに思っていたのですが大間違い。燃やすほど寒くなるのです。
実は年中チョロチョロと燃やし続ける火と分厚い植物で作る床こそがチセの秘密だったのです・・・

体感温度と輻射熱とは? 

真冬の北海道の寒さは想像を絶する世界です。そのマイナス気温の冬に、アイヌのチセ住宅が暖かいという記録が残っていました。ところが、外がマイナス−5度のときに、チセ内の気温はたった5度。温度だけ見ると決して暖かいとは言えないものでした。

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宇佐美氏の研究よりはるか前から、当時の研究者によってチセの研究は行われていました。極寒の冬を越せる笹葺き住宅は当時も不思議なものだったのです。ところが、気温を測定しても暖かくない。そうして誰もその原理に気付く事なく放置されていたのでした。
チセの温かさの秘密は輻射熱(ふくしゃねつ)が大きく影響するものだったのです・・・。

体感温度とふく射熱とは?その2 

温度計で測った気温ではなく、人間が『暑い・寒い』と感じる温度を体感温度といいます。
この体感温度は、気温とふく射熱の両方の影響を受けます。ふく射熱とは簡単に言えば物体から出
る熱。床暖房やオイルヒーターが出すようなじんわりとした熱のことです。

実は、体感温度は気温とふく射熱の平均、両方足して2で割ったものなんです。つまり、気温が低くても、周りの壁や床のふく射熱が高ければ、人は温かく感じます。
気温が5度しかなかったチセの体感温度を特殊な装置で計測すると20度もありました。気温がたった5度しかないのに、中に居る人は20度の暖かさを感じていたことになります。そしてふく射熱は35度もありました。

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この強い輻射熱の秘密は、チセの中で年中チョロチョロと燃やされる薪の火と、植物でできた壁や床、そしてその下の地中にあったのです・・・

チセ伝統の床造りとは? 

さて、チセでの当初の宿泊体験時には、床は板張りでした。翌朝、その床をはがしてみると、びっしりと氷が張っていました。これでは暖かいはずがありません。氷の上に寝ているようなものです。

ここで宇佐美氏は昭和57年の朝日新聞の記事を思い出します。「昔のチセは暖かかった」「チセも明治になって、「新しがり」のつもりで床を板張りにしたところは寒く、アイヌも風邪を引きやすくなったといわれている」。つまり、床に秘密があるのでは、と考えました。

古来のチセでは、アイヌ伝統の『床造り』と言われる手法がとられていました。葦(あし)や蒲の葉で編んだ、厚さ30センチ近くある植物でできた敷き物を敷いていたのです。まずはこれを再現することにし、地面の温度も測定することにしました。

するとそれまで、室温が上下すると地面の温度も上下していたのが、床造りを終えてからほとんど変化しなくなりました。一番寒い時期にも関わらず、数日後にはプラス2℃前後で安定し始めたのです。この床造りは、敷き物ではなく『断熱材』の役割をしていることが分かったのです・・・

戦後測定されていなかった地中熱 

さて、厚い植物で作られた敷き物で行う『床造り』や、夏も冬も絶やされることなく燃やされる薪の火『アイヌの掟』は全て、チセ下の地面を冷え込ませないためのものでした。
 
そこで宇佐美氏は、深い地中の地熱を調べようと旭川地方気象台を訪ねました。しかし、50年余り地中温度は測定されておらず、明治時代から戦中戦後の古いデータだけが残されていました。
今のように便利なセンサーのない時代に、全国各地の気象台で地下10mまでの温度が毎日測定されていたことに宇佐美氏はとても感動し、自身の論文で次のように振り返っています。
 
『・・・そのことに、言葉にならないほどの深い感動を覚えました。そして同時に、現代は、センサーを一度埋め込むだけで自動的にデータが取れるにもかかわらず、測定が中断されたままになっている事実。文脈から外れますが、これは、人類を育んできた大地への関心の薄れの表れでしょうか?20世紀末に日本文化が到達している座標点を象徴的に示されたように私は受け止めました・・・』

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さて、気象台に通い詰め、地中温度データを手書きで写しながらグラフにしていった結果、重要なキーワードが浮かび上がってきました。

『地下5mは夏と冬が逆転している!』

夏と冬が逆転している! 

旭川気象台のデータでは、気温と地下5mの地中温度では、夏と冬が逆転していました。

つまり、私たちが暑い夏を過ごしているときに、地下5mは年間でもっとも低い温度になり、逆に寒い冬を迎えるころには最も高い温度になっていたのです。これは何を意味するのでしょうか?

そのメカニズムを知るために、まず地中熱のもとが何なのか?を考えてみましょう。

日本にははっきりとした四季があり、夏には強い太陽の日差し、冬は気温がぐっと下がります。
この温度変化によって、地表面は夏熱せられ、冬は冷やされます。地面や土は断熱性と蓄熱性があるため、表面に与えられた熱は、非常にゆっくりと地中深くに伝わっていきます。夏の強い日差しで暖められた熱は、やがて地下5m付近まで到達します。が、その頃には6ヶ月経ってしまっていて、すでに上では冬がやってきているんです。

逆に、冬の気温で冷やされた冷熱は、同じように6ヶ月掛けて、つまり夏が来る頃に地下5mに伝わるんです。アイヌの人たちは、チセの中で年中火を燃やし続け、地面を冷え込ませないようにすることで、極寒の冬を乗り越える術を長い経験から会得していたのです・・・

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地中熱のもとは太陽熱と気温 

私たちの採用している『伝導型地熱利用』は、地中にパイプを埋め込んだり、ということをしません。
建物の基礎は普通の住宅と全く一緒です。コストや手間が掛からないのがメリットでもあるのですが、『それでどうやって地熱を取り込むの?』という疑問で頭がいっぱいになります。その分かりにくさが一番のデメリットだったりするのです・・・
 
では、どうやって地中熱を建物に取り込むのか、その説明の前に、まずは地中熱についておさらいしてみます。
 
地中熱とは太陽の熱が地面に伝わったものであることは以前お話しました。夏の強い日射熱が地面を暖め、その熱がゆっくりと地下に伝わり、やがて地下5m程度に達するころには6ヶ月が経過していて、季節は冬に。日射は弱まり、地表面は外気温で冷やされはじめています。
冷やされた冷熱はまた同じくゆっくりと地下へ。やがて半年掛けて5m付近に達するころにはすでに夏になっている。
この季節サイクルの繰り返しによって、地下5m付近の温度は15〜18度で推移するんです。
 
では、地表面を夏の日差しや冬の冷え込みが無い状態にしたらどうなるだろう?
これが私たちの伝導型地熱利用の発想なんです。・・・